45歳前後で、長く勤めた会社から初めて転職しようとすると、「今さら動いて年収が下がらないか」「管理職経験は社外でも通用するのか」と迷いますよね。2026年9月7日にエン株式会社が公表した分析では、同社サービスを通じた40代の転職者の53%が、転職後に年収を10万円以上増やしていました。ただし、この数字を「40代なら半数以上が年収アップできる」と受け取るのは早計です。
この記事では、20年近く同じ製造業で法人営業を続けてきた40代の課長・課長候補を想定し、今回のデータの読み方から、求人の選び方、職務経歴書、面接で確認したい条件まで整理します。転職すべきかを今すぐ決めるのではなく、まず自分の経験が社外でどう評価されるかを確かめたい方に向けた内容です。
💰 40代転職の年収データで何が変わったのか
エン株式会社の「ミドルの転職」転職者分析レポート2026は、同サービスを通じて転職した35〜59歳の人数と、転職前後の年収を2018年から2025年まで比較しています。2025年のミドル世代全体の転職者数は、2018年を1としたとき2.50。40代は1.90、50代は5.79でした。
年収については、10万円以上の増減を「増加」「減少」とし、10万円未満の増減を「変動なし」としています。2025年の結果を年代別に整理すると、次のようになります。小数点以下を四捨五入しているため、一部は合計が100%になりません。
| 区分 | 2018年比の転職者数 | 年収増加 | 変動なし | 年収減少 |
|---|---|---|---|---|
| 35〜59歳全体 | 2.50倍 | 48% | 12% | 41% |
| 30代 | 1.67倍 | 49% | 13% | 38% |
| 40代 | 1.90倍 | 53% | 11% | 36% |
| 50代 | 5.79倍 | 42% | 11% | 47% |
40代では年収増加が53%で、減少の36%を上回りました。2018年の増加割合は37%だったため、同じサービス内の推移では、年収を上げて転職した人の比率が16ポイント高くなっています。一方、転職者数の伸びは50代が際立ちますが、50代では年収減少が47%、増加が42%。転職する人が増えたことと、年収を維持しやすいことは別の話だと分かります。
💡 今回の数字から読み取れるのは「年齢だけで転職を諦める必要はない」という変化です。「応募すれば年収が上がる」という保証ではありません。
エン株式会社は背景について、AI活用、DX(=デジタル技術を使った業務や事業の変革)、事業変革など企業の課題が複雑になり、肩書や年齢だけでなく、経験を別の環境で再現できるか、周囲を巻き込めるかを見る動きがあると説明しています。これは同社による見解であり、すべての企業に共通する確認済みの事実ではありません。ただ、製造業の法人営業で顧客別採算の改善、営業プロセスの標準化、若手育成などを担ってきた方には、自分の経験を「在籍年数」ではなく「解決できる課題」に置き換えるヒントになります。
💰 「40代転職で年収アップ53%」をそのまま自分に当てはめない
この調査でまず確認したいのは対象者です。母集団は日本の40代会社員全体ではなく、「ミドルの転職」を使い、実際に転職した35〜59歳の人。転職活動を始めたものの入社しなかった人、ほかの経路だけで転職した人、現職に残った人は含まれません。また、公開資料には年代別の実人数、業種、職種、役職、転職前の年収帯が示されていません。
さらに、年収が10万円増えた人と300万円増えた人はいずれも「増加」に入ります。基本給、賞与、残業代、各種手当、株式報酬の内訳も分からないため、53%という数字だけで生活への影響までは判断できません。転職サイトの利用者構成や求人構成が2018年から変化した可能性もあります。
比較材料として、厚生労働省の令和7(2025)年上半期雇用動向調査を見ると、前職より賃金が増加した転職入職者は全体で39.4%でした。年齢別では40〜44歳が47.7%、45〜49歳が41.1%、50〜54歳が26.5%、55〜59歳が28.9%です。50〜54歳では減少が44.7%となっています。
ただし、厚生労働省の調査とエン株式会社の分析は、対象者、調査期間、賃金の定義、集計方法が異なります。数値を横並びにして優劣を決めることはできません。公的統計では年齢が上がると賃金減少リスクが高まる一面が見え、転職サービスの成約者データでは40代の年収増加事例も相当数ある。この二つを同時に見るのが現実的でしょう。
💡 「市場全体では年齢による難しさが残るが、経験が求人の課題と合えば年収を上げる余地もある」というのが、現時点で最も無理のない読み方です。
なお、募集・採用では、例外事由に該当する場合を除き年齢制限が禁止されています。厚生労働省は、求人票を年齢不問としながら実際には年齢を理由に応募を断ったり、採否を判断したりすることも法の規定に反すると案内しています。ただし、年齢不問であることと、求められる職務経験や役割期待を満たせることは別です。応募時は「年齢の壁」を想像するより、求人が何を解決してほしいのかを読み解くほうが建設的です。
📄 45歳の製造業営業が狙うべき求人は「肩書」より課題で選ぶ

長く一社で働いてきた方ほど、「営業課長」「部下10人」といった肩書から求人を探しがちです。しかし、同じ課長でも、既存顧客の維持が中心なのか、新市場の開拓を任されるのか、営業企画や事業計画まで担うのかで仕事は大きく違います。年収を維持・向上させたいなら、自分が成果を再現しやすい経営課題から求人を絞ってみてください。
たとえば「売上を120%にした」という実績だけでは、景気や担当市場に恵まれた結果なのか、本人の工夫なのかが伝わりません。「既存顧客の用途別データを分析し、設計部門と提案テンプレートを作り、重点20社への提案頻度を見直した」のように、課題、行動、周囲との連携、結果の順で説明すると再現性が見えます。数字を示す場合は、社外秘を避けつつ、事実として説明できる範囲にとどめましょう。
管理職求人だけに絞る必要もありません。プレイングマネジャー、営業企画、カスタマーサクセス、事業開発、アライアンス、調達・購買との折衝など、隣接職種で経験が評価される場合があります。反対に、役職名は同じでも、商材の販売期間、顧客の意思決定者、粗利構造が大きく違えば、立ち上がりに時間がかかるでしょう。
ここからはCareer Central AIによる分析です。40代の採用で企業が知りたいのは、過去の実績の大きさだけでなく、「その成果を新しい会社の制約下でも再現できるか」です。転職先には以前のブランド力、社内人脈、豊富な支援部門がありません。だからこそ、個人で行ったこと、チームを動かしたこと、会社の仕組みに助けられたことを分けて説明できる人ほど、期待値のずれを小さくできると考えられます。
自分の経験が生きる求人をCareer Central AIで整理する
💰 40代転職で年収を比べるなら総額と役割をセットで確認する
年収アップを優先する方も、求人票の上限額だけで判断するのは危険です。「想定年収700万〜1,000万円」とあっても、上限は特に高い経験を持つ人だけに適用される場合があります。固定残業代や業績連動賞与を含むのか、初年度の賞与は満額なのかによって、実際の受取額も変わります。
| 確認する項目 | 求人・面接で見るポイント | 見落とした場合のずれ |
|---|---|---|
| 基本給 | 月額、等級、昇給時期 | 賞与が下がった年に想定より減る |
| 固定残業代 | 含まれる時間数と超過分の扱い | 額面が同じでも時間単価が下がる |
| 賞与・変動給 | 算定基準、標準支給、初年度の扱い | 求人上の想定年収に届かない |
| 手当・退職金 | 住宅、家族、赴任、企業年金 | 基本給増でも総報酬が減る |
| 役割と権限 | 予算、人員、決裁範囲、担当顧客 | 責任だけ増えて成果を出せない |
| 評価期間 | 入社後6〜12か月の目標と評価者 | 短期売上だけで評価される |
現職の年収も、源泉徴収票の金額だけでなく、残業時間、通勤時間、出張頻度、福利厚生、退職金の積み上がりまで含めて比較すると安心です。単身赴任が必要になる求人なら、住居費や帰省費も実質的な条件。逆に、年収が少し下がっても勤務時間や勤務地が改善し、数年後に専門性を高められるなら、キャリア全体では合理的な選択になり得ます。
希望年収を伝えるときは、「現年収が800万円なので800万円以上」だけで終わらせず、任される役割とセットで話しましょう。「既存顧客の深耕に加え、営業組織の標準化と5人規模の育成を担う前提なら、現年収を基準に相談したい」と伝える形です。条件交渉を強気に見せるためではなく、企業と自分の期待値を合わせるための確認になります。
💡 年収は能力の点数ではありません。業界の利益率、会社規模、勤務地、報酬制度、任される責任によって変わるため、「下がる=失敗」「上がる=成功」と単純化しないことが大切です。
📝 40代転職の職務経歴書は「実績・再現方法・学び直し」で組み立てる
40代の職務経歴書で起きやすいのが、経験をすべて書こうとして長くなることです。採用側が知りたいのは社内固有の組織名や製品名の一覧ではなく、応募先の課題に近い経験。まず求人票から重要な役割を三つ選び、それぞれに対応する実績を一件ずつ配置してみましょう。
一つの実績は、「当時の課題」「自分の役割」「具体的な行動」「結果」「別環境でも使える考え方」の5点でまとめます。たとえば、改善前は「営業課長として部下8人を管理し、目標を達成」としか書いていなかったとします。これを、「重点顧客の選定基準が担当者ごとに異なる課題に対し、案件確度と利益率を使った共通基準を設計。技術・生産部門との週次レビューを運用し、事実として説明可能な範囲の成果を記載する」と直せば、管理人数より仕事の進め方が伝わります。
AIやデジタルツールについても、流行語を並べる必要はありません。顧客情報の整理、議事録の下書き、提案準備、需要予測など、業務のどこで使い、何を人が確認したかを説明できるほうが実務的です。未経験なら、守秘義務や個人情報に注意しながら、公開情報を使った小さな練習から始めるとよいでしょう。今回の発表にAI・DXへの言及はありますが、特定の資格を持てば年収が上がると示した調査ではない点にも注意してください。
棚卸しが進まないときは、厚生労働省が様式を定めるジョブ・カードも使えます。職務経験、学習・訓練歴、強みや価値観を整理し、応募書類やキャリア相談に活用するためのツールです。最初からきれいな文章にせず、案件名、関係者、課題、行動、学んだことを箇条書きにするだけでも材料がそろいます。
💰 応募を決める前の30日で市場価値と年収リスクを確かめる

初めての転職では、退職を決めてから急いで応募するより、在職中に仮説を検証したほうが選択肢を保ちやすくなります。次のチェックリストを、4週間で一通り進めてみてください。
- ✓ 直近10年の仕事から、応募先でも再現できる成果を三つ選ぶ
- ✓ 成果ごとに、自分の行動と会社のブランド・仕組みの寄与を分ける
- ✓ 希望職種を役職名ではなく「解決したい課題」で三つ設定する
- ✓ 同じ職種の求人を10件以上読み、共通する必須経験を記録する
- ✓ 現年収を基本給、賞与、残業代、手当、退職金に分解する
- ✓ 希望条件を「必須」「相談可能」「あればよい」の三段階にする
- ✓ 不足するデジタル・会計・語学スキルを一つだけ学び始める
- ✓ 職務経歴書を、求人ごとに冒頭の要約と実績の順序だけでも変える
- ✓ 面接で入社後6か月の期待成果、権限、支援体制を確認する
- ✓ 内定後は口頭説明だけでなく、労働条件通知書で報酬条件を確認する
1週目は棚卸し、2週目は求人比較、3週目は書類作成、4週目は第三者からのフィードバックという順番がおすすめです。書類選考の反応が弱い場合も、「年齢のせい」と即断しないでください。求人との距離が遠い、職務要約が抽象的、専門用語が社外に伝わらないなど、修正できる要因があります。
面接では「部下は何人でしたか」への回答だけで終わらず、メンバーの経験差をどう把握し、どんな運用を変え、どの指標で改善を確認したかまで話します。同時に、自分からも「この採用で解決したい課題は何ですか」「前任者や現在のチームが困っている点は何ですか」「半年後、どの状態なら期待に応えたと評価されますか」と尋ねましょう。答えが曖昧なら、入社後に責任範囲が膨らむリスクがあります。
今回の調査は、40代の転職が珍しいものではなくなり、年収を上げた事例も増えていることを示す材料です。一方で、36%は年収が減少しており、公的統計でも50代に入ると賃金減少の割合が高まる傾向が確認できます。焦って結論を出すより、45歳の今、自分の経験がどの求人で評価されるかを試すこと。その結果を見て、現職に残る、社内異動を目指す、転職するという三つの選択肢を比べればよいのです。
Career Central AIで40代の転職候補と準備項目を見つける
🔗 参照元
以下は2026年9月8日9時02分(日本時間)に内容とURLを確認しました。
🔗 出典・参照リンク
- エン株式会社「ミドルの転職 転職者分析レポート2026(2025年実績)」(2026年9月7日公表)
- エン株式会社「転職者分析レポート2026」PDF(2026年9月7日公表)
- 厚生労働省「令和7(2025)年上半期雇用動向調査結果の概況」(2025年12月23日公表)
- 厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」(掲載資料は2025年4月1日時点)
- 厚生労働省 マイジョブ・カード「ジョブ・カードを知る」(公開日記載なし)

