SIerで要件定義や企画書づくりを担当し、「生成AIで上流工程まで自動化されたら、自分の仕事はどうなるのだろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。TISIとアットストリームコンサルティングは2026年7月28日、システム企画構想にAIエージェントを適用し、主要なドキュメントの作成工数を最大70%削減したと発表しました。
これは「コンサルタントが不要になる」というニュースではありません。むしろ、資料を作る速さよりも、顧客の曖昧な話から論点を見つけ、AIの出力を検証し、変革の優先順位を決める力が評価されやすくなる転換点です。この記事では、要件定義経験をAIコンサルタント転職へつなげる方法と、TISIの中途採用を検討するときの確認事項を具体的に整理します。
📄 AIコンサルタント転職に関わる「最大70%削減」の中身
TISIの発表によると、両社は生成AIの業務活用を支援する「Agentic AI Platform」を基盤に、システム企画構想の成果物づくりを支援するAIエージェントアプリケーションを開発しました。PoC(=本格導入前の小規模な検証)だけではなく、実際のコンサルティング案件へ適用して効果を確かめた点が今回のポイントです。
対象となったのは、ヒアリング内容の要約、業務・システム課題の分析、課題と要望の整理、As-Is/To-Be業務整理、業務フロー作成、システム要求事項整理です。As-Isは現在の業務、To-Beは目指す業務の姿を指します。いずれも、業務コンサルタントや上流SEが多くの時間を使ってきた仕事でしょう。
| 発表で確認できた項目 | 具体的な内容 | 転職希望者が注意する点 |
|---|---|---|
| 適用領域 | システム企画構想プロセス | 開発工程全体や全案件の数字ではありません |
| 支援対象 | 要約、課題分析、As-Is/To-Be整理、業務フロー、要求事項など | 顧客との合意形成や最終判断まで自動化したとは発表されていません |
| 効果 | 主要なドキュメント作成工数を最大70%削減 | 「最大値」であり、すべての成果物が一律70%減るわけではありません |
| 品質対策 | 用途別に複数の大規模言語モデルを使い、出力の検証・修正を組み込む | AIに一度質問して終わる使い方ではなく、評価工程まで設計しています |
| 運用 | 現場で使いながら評価・改善サイクルを回す構成 | 導入後の品質測定や更新を担える人材が必要になります |
もう一つ見逃せないのが、効率化で生まれた時間を「論点の深掘り」や「検討範囲の拡大」に充てるとしていることです。企業側が期待しているのは、同じ資料を少ない人数で作ることだけではなく、企画の質とスピードを同時に上げること。AIで空いた時間に何を考え、どんな意思決定を支援できるかが問われます。
💡 ここまでが発表で確認できる事実です。「コンサルタントの仕事が70%減る」「人員を70%削減する」という意味ではありません。
📄 要件定義AIで減る作業と、むしろ重くなる仕事

ここからはCareer Central AI編集部の分析です。AIが先に置き換えやすいのは、形式が決まっていて、入力と出力の対応を評価しやすい作業だと考えられます。たとえば、会議記録の要約、既存資料からの課題候補の抽出、業務機能一覧を基にしたフローの下書き、要求事項の分類などです。これらは重要ですが、成果物を作る工程の一部にすぎません。
一方、顧客が言葉にできていない不満を拾う、部署ごとに食い違う要望を調整する、投資対効果とリスクを比べる、経営課題をシステム要件へ翻訳するといった仕事は、責任の所在を含む判断が欠かせません。AIの候補を採用するのか、修正するのか、捨てるのかを決めるのは人です。誤った前提から整った資料が高速で作られる危険もあるため、検証力の価値はむしろ高まるでしょう。
| 仕事の変化 | AIが支援しやすい部分 | 人に残る・比重が増す部分 | 職務経歴書で示したい経験 |
|---|---|---|---|
| 顧客ヒアリング | 発言の要約、論点候補の抽出 | 質問設計、矛盾の発見、言外の意図の確認 | 質問を変えて真因を特定した事例 |
| 課題整理 | 情報の分類、類似課題の統合 | 因果関係の判断、優先順位づけ | 課題を絞り込み、投資判断につなげた事例 |
| 業務フロー | 標準フローや初稿の生成 | 例外処理、権限、部門間の責任分界の設計 | 現場確認で例外や手戻りを発見した経験 |
| 要求事項 | 要件候補の文章化、分類 | 要件の妥当性、実現可能性、受入条件の合意 | 要望と必須要件を切り分けた経験 |
| AI運用 | 定型的な出力と自己検証 | 評価基準、アクセス権、ログ、改善手順の設計 | 品質指標やレビュー工程を設計した経験 |
「プロンプトを書けます」だけでは差別化しにくくなります。評価されるのは、良い出力の条件を定義できること、根拠資料まで追跡できること、誤りが起きた場合の影響を見積もれることです。これまでレビュー観点表、受入基準、品質管理票を作ってきた経験は、AI時代にもそのまま生かせます。
💡 要件定義AIの時代に強いのは、最初から正解を書ける人より、出力を検証できる基準を作り、関係者が納得する結論まで導ける人です。
📄 TISI中途採用を企業研究する3つの視点
TISIへの応募を考えるなら、今回の一件だけで判断せず、会社全体のAI戦略、人材育成、実際の配属候補をつなげて見る必要があります。同社は2026年7月1日にTISとインテックが合併して発足しました。現在の求人を見るときは、旧会社の事業や制度がどのように統合されるのかも確認しておくと安心です。
1.AIを「便利な道具」ではなく業務プロセスへ組み込んでいるか
TISIの2026年3月期決算説明資料では、基幹システム、業務アプリ、エージェント型AI、データ基盤、インフラ、ガバナンスを層として捉え、構想から実装まで提供価値を広げる方針が示されています。今回も単純な文章生成ではなく、用途に応じたモデル選択、出力の検証・修正、継続的な評価改善が組み込まれました。
これは応募者にとって、LLMの知識だけでなく、ERP・CRM・SCMなどの基幹業務、データのアクセス権、セキュリティ、運用設計の経験を掛け合わせられる余地があることを意味します。業務知識が古くなると心配している方もいるでしょう。しかし、AIを安全に業務へ接続するには、現場固有のルールを理解する人が必要です。
2.上流へ移るための育成経路が見えるか
TISIの人材活用施策では、課題設定・解決力を強化するコンサル基礎教育や、高度コンサル人材を育てるプログラムが紹介されています。ビジネスイノベーションプロフェッショナル育成プログラムのグループ累計受講者は1,100名以上とされています。また、同社は「学び」や「研究」も投資と位置づけ、社員一人当たり年間約12日を充てる方針を掲げています。
ただし、制度があることと、希望する配属で利用できることは別です。面接では「受講できますか」だけでなく、受講後にどのような案件へ移った事例があるか、実務時間として確保されるか、上司の推薦や選抜が必要かまで聞きましょう。未経験領域への転職では、研修の名称よりも、案件経験へつながる仕組みのほうが大切です。
3.求人票と今回の実案件が本当に接続しているか
TISIのキャリア採用サイトには、コンサルタント、プロジェクトマネージャー、ITアーキテクト、データサイエンティストなどの仕事や、募集中求人への入口があります。ただし、「AI」「DX」と書かれた求人がすべて今回のようなシステム企画構想を扱うとは限りません。
求人票では、所属組織、顧客業界、担当工程、提案とデリバリーの比率、AIアプリを作る側か使って変革を進める側かを確認してください。現在の担当が要件定義中心なら、AIモデル開発職だけを探すより、業務コンサル、ITコンサル、ビジネスアーキテクト、AI導入コンサルなども候補になります。
要件定義経験を生かせるAI・DX求人をCareer Central AIで整理する
📄 AIコンサルタント転職で評価される5つの実務力
IPAのDX推進スキル標準は、ビジネスアーキテクトを、変革の目的を定義し、業務プロセスを設計し、関係者を調整しながら成果を生み出す役割と説明しています。今回のニュースと重ねると、これからの上流人材に必要な力は次の5つに整理できます。
課題設定力とは、顧客が口にした要望をそのまま要件にするのではなく、「なぜ必要なのか」「解決後に何が変われば成功なのか」を定義する力です。チャットボット導入という要望に対して、問い合わせ件数の削減が目的なのか、回答品質の均一化が目的なのかで設計は変わります。
業務プロセス設計力は、現行業務を図にする技術だけではありません。どの判断をAIへ任せ、どこで人が承認し、例外が起きたら誰へ戻すかを設計する力です。今回のように業務フローの初稿をAIが作れるなら、人は責任分界と例外処理へ、より深く向き合う必要があります。
評価・品質管理力では、正答率だけでなく、根拠の追跡可能性、再現性、重大な見落とし、修正時間などを測ります。「AIで工数が減った」と示すには、導入前後で同じ条件を比較しなければなりません。評価用データの作成やレビュー基準の策定経験は、職務経歴書で具体的に書きたい材料です。
データとセキュリティの統制力も欠かせません。顧客ヒアリングには、個人情報、取引条件、未公開の経営課題が含まれることがあります。どのモデルへ何を送れるか、保存期間はどうするか、誰がログを確認するかを決められる人は、AI導入を実案件へ進める場面で価値を発揮します。
合意形成力は、AIの提案を会議へ持ち込み、現場、情報システム部門、経営層の判断基準をそろえる力です。出力が論理的でも、現場で運用できなければ成果にはなりません。「関係者の反対をどう整理し、何を条件に合意したか」を話せると、単なる資料作成者ではないことが伝わります。
💡 AIコンサルタントを目指す際は、ツール名の数ではなく、「目的設定→設計→検証→合意→改善」の一連の経験を示しましょう。
📝 職務経歴書と面接で、要件定義経験をどう見せるか

職務経歴書でありがちなのが、「要件定義書を作成」「顧客ヒアリングを担当」と作業名だけを書くことです。AIが成果物の初稿を作れるようになるほど、採用側が知りたいのは、その人がどんな判断をしたかです。背景、課題、自分の判断、関係者への働きかけ、結果の順で一つの事例を説明しましょう。
たとえば「販売管理システムの要件定義を担当」だけではなく、「営業と経理で売上計上の定義が異なっていたため、例外取引を分類し、承認条件を再設計。要件の手戻りを抑えて基本設計へ移行した」と書けば、課題発見と合意形成が見えます。工数や件数を示す場合は、記録で確認できる数字だけを使ってください。
生成AIの実務経験がまだなくても、機密情報を除いた架空の業務を使い、ヒアリングメモから課題一覧、As-Is/To-Be、要求事項を作る小さな検証はできます。重要なのは出力の派手さではなく、評価基準を先に決め、誤りと修正理由を記録すること。ポートフォリオには入力データの出典、利用条件、評価表、人による承認点も添えましょう。
- ✓ 職務経歴書に、成果物名だけでなく自分が行った判断を書いたか
- ✓ 顧客の要望と、本当に解くべき課題を分けて説明できるか
- ✓ As-Is/To-Beの間にある変更点と影響部署を示せるか
- ✓ AI出力を採用・修正・却下する基準を言語化できるか
- ✓ 機密情報、個人情報、アクセス権の扱いを説明できるか
- ✓ 効率だけでなく品質や顧客成果を示す指標を持っているか
- ✓ 失敗した出力と、改善のために変えた条件を記録したか
- ✓ 応募先のAI活用がPoC止まりか、実案件へ入っているかを確認したか
面接では、「AIで作業が減ったら何に時間を使いますか」と聞かれる可能性があります。「より多くの資料を作ります」では弱く見えます。顧客への追加ヒアリング、例外パターンの検証、投資対効果の比較、現場での受入テストなど、意思決定の質を上げる行動へ結びつけるとよいでしょう。
✅ 90日で始める要件定義AIのキャリア準備
最初の30日は、過去案件を棚卸しします。守秘義務に触れない範囲で、課題設定、業務整理、要件の優先順位づけ、関係者調整、品質管理の事例を各一つ選びましょう。資料そのものを持ち出す必要はありません。自分が何を観察し、どう判断し、結果がどう変わったかを文章にします。
次の30日は、小規模なAI検証です。架空の業務ヒアリングを用意し、要約、課題分析、As-Is/To-Be、要求事項の順に出力させます。そのうえで、重大な見落とし、根拠のない補完、用語の揺れ、例外処理の不足を記録してください。生成速度だけでなく、レビューと修正を含む総工数を測るのがポイントです。
最後の30日は、応募先の比較へ進みます。TISI中途採用に限らず、求人票と企業資料を照合し、AIをどの業務へ組み込み、誰が品質責任を持ち、どのような人材を育てようとしているかを調べます。AIツールの導入数よりも、実案件の有無、評価方法、データ管理、育成後の配属実績を重視すると、入社後のずれを減らせます。
今回の発表は、上流工程の価値がなくなる知らせではありません。定型的な整理や初稿作成が速くなる一方で、問いを立てる力、出力を疑う力、現場を巻き込む力が、よりはっきり評価されるようになる兆しです。要件定義を経験してきた方には、すでにその土台があります。まずは過去の仕事を「何を作ったか」から「何を判断したか」へ書き換えてみてはいかがでしょうか。
AI時代にも生きる上流工程の経験をCareer Central AIでキャリアの選択肢につなげる
参照元(確認日時:2026年7月28日15時00分、いずれも日本時間)

